皆さんは客引き(俗に言うキャッチ)がどれぐらい儲けているかご存じでしょうか?
客引きの知人の方などから聞いた話では、いわゆる「フリーの客引き」(店の従業員でなく色々な店と契約している客引き)だと月に70万円以上も稼ぐ者もいるそうです。
客引きを個人事業主とした場合の税金がいくらになるかシミュレーションしてみました。結果が次の通りです。
個人事業主のかんたん税金計算シミュレーション by スモビバ!
https://www.sumoviva.jp/knowledge/tax-calc/
毎月50万円とした場合で約185万円、毎月70万円なら約282万円が納税額になります。もしこれらを申告もせず、納税していないなら毎年200万円近くを脱税していることになります。
客引きを取り巻く問題
では、客引きを儲けさせているのは誰なのでしょう?客引きが直接お金をもらうのは客を入れた店ですが、そういった関係が成り立つのは、一般の方、皆さんが客引きを使っているからです。
皆さんが一生懸命に真面目に働いて給料を貰い、そこから更にルールに従ってちゃんと税金を納めているのに対して、客引きは違法なことをして多くのお金を儲けています。ただ、それを儲けさせているのは皆さんということです。
また、違法行為で儲けたお金が反社的な団体や生活保護の不正受給と関わっているというのも世間ではよく耳にする話です。
少し前に、反社のパーティーと知らずに出演料を貰い、世間やメディアから叩かれた芸人さんがいましたが、自分たちの割と身近でズルをしている人間がいるのに、誰にも何も言われないのはおかしいと思いませんか?
客引きの人物像
客引きと聞くとチャラい中身のないような人物を想像するかもしれませんが、そうではありません。見た目は至って普通の子で、どちらかというと気の良さそうで感じで、気さくに人懐っこく話しかけてくるのがスタイルです。
客引きも、ただ声を掛ければ勧誘できるわけではありません。「どういうグループが成功しやすいか」「この年代・このタイプの人にどう言えば成功しやすいか」などを分析する頭の良さが必要です。また、相手を盛り上げて巧みに店に誘う話術やテクニックといった高いコミュニケーション能力が必要です。そして、違法行為をしてでも稼ぐというお金への執着心も必要です。
客引きの人物像をまとめるなら「見た目は普通っぽく気さくそう。中身は狡猾で高いコミュ力を持ち、自分が儲かるなら違法行為もOKという思考の人間」ということになります。
客引きの破滅ルート
これを読んでそんなに儲かるならやってみようと思った人に、申告と納税を怠った場合の、割と現実的な破滅ルートを考えてみましたので、参考にしてみてください。
- 自分が客を入れている店に税務調査が入る
- 店が不明瞭な支出を指摘され、自分への報酬だとバレる
- 自分の無申告がバレる
- 納税していない分の税金に加え、重加算税や延滞税が課せられる
通常の税額が最初に紹介した通りです。また、多くの収入がありながら無申告で取引の証拠も残してないなら、プラスで40%の重加算税が課せられる可能性も高く、延滞税(年7%など)も課せられます。これが2年・3年と積み上がったなら、その後数年は税金を払うために働くことになるかもしれません。
ちなみに自己破産しても税金の滞納については免除されません。
もっと簡単な破滅ルート
無申告が発覚するキッカケでもっと簡単なのが知人や周りの人による通報です。
恨みを持った人にとって、これほど簡単に逆襲できる方法はありませんし、妬んだ人にとって、これほど簡単に貶められる方法はありません。最悪の場合、ゆすってくる人もいるかもしれません。
通報者は守られる上、次のような所から簡単に通報することができます。
課税・徴収漏れに関する情報の提供
https://www.nta.go.jp/suggestion/johoteikyo/input_form.html
課税・徴収漏れに関する情報の提供フォーム
https://www.nta.go.jp/suggestion/johoteikyo/input_form2.html
通報の際には、相手の氏名・住所・電話番号・おおよその所得などを集めておくのがベターです。
時効は5~7年だそうです
5年が長いか短いかは個人の感じ方ですが、20・30代の5年ならかなり大きな変化があります。
今から数年後には、自分がやりたい仕事に就いて、好きな人と結婚して、可愛い子どもが生まれているかもしれません。そして『子どもがはじめてしゃべった!』と家族で喜んでいるところに、突然、税務署から電話があり・・・、ということも全く無い話ではありません。
自分の未来を賭けてまでやるべき事ではないと思いますが、最終的には自分で判断してください。
フリーの客引きは違法じゃない?
まずは、客引きが違法となる根拠は風営法です。
第22条 風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 当該営業に関し客引きをすること。
二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
引用元:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 第22条
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000122&openerCode=1
違反した場合は、懲役6か月もしくは100万円以下の罰金(併科)となっています。
第52条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二十二条第一項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の二十三及び第三十二条第三項において準用する場合を含む。)、第二十八条第十二項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の三第二項の規定により適用する場合を含む。)又は第三十一条の十三第二項第一号若しくは第二号の規定に違反した者
引用元:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 第52条
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000122&openerCode=1#177
また、高知県のいわゆる迷惑防止条例に客引き行為等の禁止として第8条に定められています。
第8条 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 次に掲げる行為について、客引き(ウに掲げる行為に係る利用者に対する勧誘を含む。)をすること。
ア 人の性的好奇心をそそる見せ物、物品若しくは行為又はこれらを仮装したものの観覧、販売又は提供
イ 歓楽的雰囲気を醸し出す方法で客をもてなして飲食をさせる行為又はこれを仮装したものの提供
ウ 人の性的好奇心をそそる行為を提供する営業又は歓楽的雰囲気を醸し出す方法で客をもてなして飲食をさせる営業に関する情報の提供
エ 午後10時から翌日の午前6時までの間における専ら人の身体に接触して行う役務又はこれを仮装したものの提供
(2) 前号ア又はイに掲げる行為(同号イに掲げる行為にあっては、当該行為が、人の通常衣服で隠されている下着等に接触し、又は接触させる卑わいなものを伴う場合に限る。)について、人に呼び掛け、又はビラ、パンフレットその他の物品を配布し、若しくは提示して客となるよう誘引すること。
(3) 売春類似行為をするため、客引きをし、又は客待ちをすること。
(4) 次に掲げる行為について、当該行為をする役務に従事するよう勧誘すること。
ア 人の性的好奇心をそそる行為(当該行為を撮影するための被写体となる行為を含む。)
イ 歓楽的雰囲気を醸し出す方法で客をもてなす行為
(5) 第1号、第3号及び前号に掲げるもののほか、人の身体若しくは衣服を捕らえ、又は所持品を取り上げる等により、執ように客引きをし、又は役務に従事するよう勧誘すること。
2 何人も、対償を供与し、又はその供与の約束をして、他人に前項の規定に違反する行為をさせてはならない。
3 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、第1項第1号イからエまでに掲げる行為(同号イに掲げる行為にあっては、当該行為が、人の通常衣服で隠されている下着等に接触し、又は接触させる卑わいなものを伴う場合を除く。)について、人に呼び掛け、又はビラ、パンフレットその他の物品を配布し、若しくは提示して、客又は利用者となるように誘引してはならない。
4 警察官は、前項の規定に違反して誘引を行っていると認められる者に対し、当該誘引を行うことをやめるべきことその他の当該違反を是正するため必要な措置を講ずるよう命ずることができる。
引用元:高知県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
https://www.reikisyuutou.pref.kochi.lg.jp/reiki/JoureiV5HTMLContents/act/print/print110001941.htm
簡単にまとめるとキャバクラ・ラウンジなど社交飲食店は「客引き」や「スカウト」をすることも、それを人にさせることもしてはいけないし、ビラなども配ってはいけないという事です。
もちろん、違反者への罰則も定められています。
第15条 第3条又は第5条から第10条まで(第8条第2項から第4項までを除く。次項において同じ。)の規定のいずれかに違反した者は、50万円以下の罰金、拘留又は科料に処する。
2 常習として、第3条又は第5条から第10条までの規定のいずれかに違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
なので、「フリーの客引きは違法じゃない」「フリーの客引きに頼めば店は違法じゃない」というのは全くデタラメな話です。
個人だから捕まらない?
現実問題として、会社と個人なら会社の摘発が優先されるという面があります。ただし、客引きの場合で考えると必ずしもそうでもありません。
○店の従業員による客引き
客引き〔罰金〕 + 店〔罰金〕
○フリーの客引き
客引き〔罰金〕 + A店〔罰金〕 + B店〔罰金〕 + C店〔罰金〕・・・
つまり、店の従業員が客引きした場合は、客引きした本人とその店だけが摘発対象になります。しかし、フリーの客引きなら、客を入れている店を芋づる式に摘発も可能で、取り締まる側からするとその方が早いと考える可能性もあるというわけです。
これは店側としても、しっかりと認識しておくべきことです。
まとめ
最後にこの記事の内容をまとめておきます。
- フリーの客引きを個人事業主とした場合、納税額は200万円近くになり、申告・納税していないなら毎年多額の脱税をしていることになります。
- 真面目に働いて納税している一般の方々が客引きを使うことで、ズルしている人間を儲けてさせているという現実があります。
- 客引きの人物像は「見た目は普通っぽく気さくそう。中身は狡猾で高いコミュ力を持ち、自分が儲かるなら違法行為もOKという思考の人間」です。
- 客引きで儲けても申告・納税を怠れば、店への税務調査や周りからの通報で無申告が発覚し、相当のペナルティを受けることになります。通報はネットからも簡単に行うことができます。
- フリーの客引き(客引きを依頼した店も)が違法なのは、風営法や迷惑防止条例を見れば明白です。
このような不公平や違法行為が解消されるように、県・市・警察の方々には早急に取り組んでいただけることを願っています。
客引きとボッタクリの関係性についてはこちらの記事で紹介しています。